10月28日つくばで実走実験を開始予定
3社大成建設・ティアフォー・大成ロテック
11〜12月成田などで後続実験
2024年政策検討会が本格始動

28日に始まるのは実験であって、全国を結ぶ無人物流網の開通ではない。

荷物だけが走る「道」は、道路の意味を変えるか

日本の道路は、人と車が移動するために築かれてきた。国土交通省が進める「自動物流道路(オートフロー・ロード)」は、その前提を問い直す。貨物専用の空間に小型の無人搬送機器を走らせ、拠点での積み替えも自動化できれば、ドライバーが長距離を運ぶ仕組みの一部を変えられるかもしれない。ただし、これは未来像であって現在の運行実績ではない。国交省は10月20日、2026年度の実証実験の実施日程を公表した。最初の現場実験は28日に茨城県つくば市で始まる予定だ。

10月28日、何を実験するのか

会場は国土交通省の国土技術政策総合研究所。大成建設株式会社、株式会社ティアフォー、大成ロテック株式会社のチームが、10月28日〜11月2日と11月10日に実験を予定している。公表された計画では、トンネルを想定した特徴の少ない直線部での位置推定の補正、複数台の搬送機器の走行、停車位置の精度、停止・障害物回避、車両搭載設備の簡素化などを検討する。試験は研究施設で行われ、一般の利用者が荷物を運べる営業道路ではない。

なぜ「特徴のない直線」が難しいのか

自動走行はセンサーで周囲を把握し、自分の位置を推定して進む。ところが同じ壁や床が続く閉鎖空間では、地物の特徴から位置を確かめにくい。大成建設グループは反射体などを用いた補正効果を確かめる計画だ。複数台で走るなら、それぞれの位置だけでなく相互の間隔、待避、停止の仕組みも重要になる。数台の制御に成功しても、それだけで全国の道路網を安全に管理できるとは言えない。

成田空港は実物大の検証の場に

11月以降には成田国際空港の施設などで、異なる企業グループが実証を行う。清水建設、IHI、野村不動産のグループは11月9〜18日、千葉県、成田国際空港、大林組、Cuebus、NTTデータのグループは11月19〜25日、鹿島建設、三菱電機、西濃運輸、ダイナミックマッププラットフォームのグループは12月7〜18日を予定する。清水建設の「温故創新の森NOVARE」と三菱電機の尾張旭工場でも別の日程で検証が計画されている。空港施設内の試験と航空貨物の商用輸送開始は区別すべきだ。

動く台車をつくれば終わり、ではない

実証の柱は二つある。一つは物流拠点での荷役処理能力や必要面積などを計算するテーマ1。もう一つは3台以上の搬送機器による走行や走行環境との連携を扱うテーマ2だ。運搬車両が速くても、拠点で箱を降ろせず滞留すれば全体の物流は速くならない。搬入量が時間帯で変わるとき、何台の搬送機器とどれほどの保管空間が必要か。道路の構造と倉庫の構造を一体で設計する必要がある。

磁力、地図、光ファイバー――方式もまだ競っている

千葉県などのグループは路面に設けたコイルと永久磁石を組み合わせる搬送方式を検証する計画だ。鹿島建設などのグループは、道路側の光ファイバーセンシング、搬送機器、物流拠点、車両のシステム連携を検討する。フォーラムエイトは対面走行や高速走行時の圧力波などについてシミュレーションを担当する。現段階で全国共通の最終仕様が決定されたわけではない。技術の選択は安全性だけでなく建設費、維持管理、停電時の対処にも影響する。

背景にある「物流の2024年問題」

この構想が注目される背景には、トラック運転者の長時間労働と人手不足がある。2024年4月から自動車運転業務にも時間外労働の上限規制が適用され、輸送能力の不足が懸念されてきた。そもそも人口減少の下で物流需要の小口化・多頻度化が進み、集配や仕分けの負担は増している。規制を緩めて運転者の長時間労働に頼るのではなく、輸送量をどう確保するかという問いから政策を考える必要がある。

2024年の検討会から2026年の現場へ

国交省は2024年2月に「自動物流道路に関する検討会」を始め、同年7月に中間とりまとめを公表した。2025年7月には最終とりまとめをまとめ、研究と制度・ビジネスモデルの検討が続けられた。2026年9月8日に今年度の実証事業者を採択し、10月20日に現場日程を公表した。2024年の問題意識が、実際の設備・運行の制約を確かめる段階へ移っている。ただし、道路そのものの建設を承認した段階ではない。

高速道路の中央分離帯か、地下か

国交省の構想図には、高速道路の中央分離帯など既存の道路空間を活用する案が示されている。海外ではスイスの地下物流構想なども比較対象に挙げられてきた。だが実際の用地、断面、接続地点、積み替え施設は、建設費と運営方法とセットで検討しなければならない。今回の実証を「全国の高速道路の地下に無人トンネルが完成する」と表現するのは誤りだ。都市間の具体的なルートや事業化時期が確定したとの資料もない。

事故、火災、豪雨にどう備えるか

無人化とは監督が不要になることではない。故障車が狭い走行空間に停止した場合の回収、貨物の落下、火災、地震、浸水、通信障害、電源喪失への対応が必要になる。保守要員が立ち入る際の安全確保も課題だ。自動車と違って人が乗らないため可能になる設計もある一方、異なる荷姿や危険物の取り扱い、他の輸送手段との責任分界は難しい。実証計画の一部には落下物検知や回避が含まれるが、総合的な安全性が立証されたわけではない。

脱炭素は電力源と建設まで見て判断する

電気で動く小型搬送機器なら、運転時の排出を削減できる可能性がある。しかし道路の新設にはコンクリートや鋼材、設備の製造が必要で、充電電源の構成も排出量に影響する。従来のトラック輸送との比較には、実際の積載率、空車回送、道路建設と保守、荷役工程を含むライフサイクル評価が不可欠だ。国交省が掲げるカーボンニュートラルへの貢献は目標であり、今回の試験で削減率が確定するわけではない。

誰が建設し、誰が料金を払うのか

物流事業者の目線では、自動化設備の導入費だけでは足りない。物流拠点へのアクセス、車両からの移し替え、需要が少ない時間帯の設備稼働率、保険、故障時の代替輸送が収益を左右する。利用料金を誰が支払い、道路空間を誰が整備し、保守を誰が引き受けるのか。国交省が検討してきたビジネスモデルは重要だが、現時点で今回の実験から採算性や建設総額を算定することはできない。

明日の実験から見るべき数字

10月28日の注目点は、無人台車が動いたという映像だけではない。計画した経路で止まり、障害物に反応し、複数台で安定して走れるか。そして拠点への引き渡しを含めた物流全体の処理能力を、再現可能な条件で測れるかだ。実験結果や定量的な数値は本稿執筆時点で示されていない。公開の実施報告を待ち、成功した項目と未解決の項目を分けて検証する必要がある。

人の働き方まで変えるか

自動物流道路はトラック運転者を直ちに不要にする計画ではない。集荷と配達の最初・最後の区間、特殊貨物への対応、点検や障害復旧には人が必要だろう。運転の仕事が少し減る代わりに、運行監視、保守、拠点運営、情報システムの仕事が増える可能性もある。働く人を単なる不足する数とみなさず、移行の負担をどう分担するかも政策の成否を決める。

未来の物流を左右するのは、地味な検証

高速道路の下を小さな貨物台車が走る未来図は、人の想像を刺激する。しかし社会実装を左右するのは、長い直線で位置を見失わず、急停止し、荷物を受け渡し、壊れても復旧できるという地道な能力だ。28日の試験はその出発点である。日本が問われているのは、誰も運転しない道路を造れるかだけでなく、誰かが確実に荷物を受け取れる物流を、持続可能な費用で支えられるかということだ。

出典・確認資料

国土交通省の2026年10月20日発表と実証実験計画概要、2024〜2025年の検討資料に基づく。10月28日以降の実験結果、事業化時期、建設費、営業路線の選定は未確定。独自インタビューは実施していない。

  1. 国土交通省:10月20日実証実験発表
  2. 国交省:実証実験計画概要
  3. 国交省:自動物流道路政策・検討経緯
  4. 国交省:10月23日インフラ分科会
  5. 国交省:検討会の資料
  6. 国交省:実装コンソーシアム
  7. LNEWS:走行実験と技術内容