飼い主が急に入院したら、今夜のごはんは誰が用意するのか。避難が必要になったら、その犬や猫をどこへ連れて行くのか。9月20日から26日までの動物愛護週間は、動物への思いを、こうした具体的な備えに変える機会でもある。

2026年度の中央行事は「動物愛護週間100年」を掲げ、人と動物との関わりを振り返る。全国の地方行事にも、譲渡の紹介、飼い方相談、ペット防災、長く暮らしてきた犬猫と飼い主の表彰などが並ぶ。身近な催しの向こうにあるのは、動物が年を取り、人の生活が変わっても、適切な世話を続けられるかという問いだ。[1][2][3]

9月の一週間と、秋に続く行事

動物愛護週間の日付は「動物の愛護及び管理に関する法律」第4条で定められている。国や自治体、関係団体が協力し、動物の愛護と適正な飼養への理解を広げる仕組みである。環境省によると、中央行事は1977年から実施してきた。[1][4]

今年の中央行事は二つの日程で案内された。9月19日には東京国立博物館の平成館大講堂を会場とする表彰式・シンポジウム、11月14日には上野恩賜公園の不忍池周辺で屋外行事が設定されている。9月の企画が歴史と共生のあり方を考えるシンポジウムを柱としたのに対し、11月は屋外での展示や交流を予定している。[1][2]

11月の屋外行事は10時から16時までの予定で、入場無料、申込み不要。作品展示や相談センターの紹介、ステージ企画などが案内されている。動物愛護週間そのものが11月へ移ったわけではなく、関連行事が秋を通して続くということだ。[1][2]

歴史が示す、飼い主の責任の広がり

今年の「100年」というテーマと、現在の法律の歴史は区別して捉える必要がある。近代の啓発活動を振り返る行事のテーマは、現行法が100年前からあったという意味ではない。法律は1973年に「動物の保護及び管理に関する法律」として制定され、1999年の改正で現在の名称へ変わった。[1][5]

2012年の改正では、所有者の責務として終生飼養などが明文化され、2013年9月に施行された。終生飼養(しゅうせいしよう)は、動物が命を終えるまで適切に飼うという考え方である。法律第7条は、動物の健康や安全だけでなく、逸走の防止、周辺の生活環境への配慮なども飼い主の責務として位置づけている。[4][5]

この歩みから見えてくるのは、動物を好きだという気持ちに、日々の管理と将来への備えを重ねる方向である。迎えた時点の住まい、収入、体力がずっと同じとは限らない。長く飼う意思を、変化に対応できる計画で支える必要がある。

「かわいがる」を、動物の状態から考える

環境省の啓発資料は、アニマルウェルフェアを動物の心と体の状態として説明し、その指針として「5つの自由」を紹介している。食べ物と水が足りているか、快適な場所があるか、痛みや病気に対応できているか、恐怖を感じずに過ごせるか、その動物本来の行動ができるか、という観点だ。[6]

飼い主が満足していることと、動物が快適であることは、いつも一致するとは限らない。例えば猫の室内飼養では、外に出さないことに加え、上下に動ける空間や落ち着ける場所を用意する配慮がいる。犬では種類や性格に合った運動や接し方を考える。環境省の飼養資料も、習性に応じた環境づくりを求めている。[7]

行事への参加も、動物の体調や負担を優先して判断したい。多くの人に会わせること自体が愛護の実践になるわけではない。人だけで相談や講座に参加し、家での世話を見直すことにも意味がある。

札幌と岐阜——催しを、相談の入り口に

9月23日、アクセスサッポロでは動物愛護フェスティバルが予定されている。主催側の案内には、適正飼育と防災対策、同行避難に備えたケージトレーニング、長寿犬猫の表彰などが掲載されている。楽しむ場と、普段は後回しになりがちな備えを学ぶ場が重なっている。[3][8]

同じ9月23日、岐阜県動物愛護センターでは13時から15時30分まで、センターフェスティバルが予定されている。犬のしつけや犬猫の病気の相談、犬の心音を聴く体験、バックヤードツアーなどが案内されている。参加無料で全体の事前申込みは不要だが、バックヤードツアーは当日予約制である。[9]

こうした機会には、「困ってから行く場所」を前もって知る価値がある。飼い方の相談先、譲渡に関する手続き、地域で協力する獣医師や団体を知っておけば、問題が起きたときに話を始めやすい。行事の名称だけで動物同伴可と判断せず、最新の開催情報と入場条件を主催者の案内で確認しておきたい。

動物も、人も年を取る

環境省の「共に生きる 高齢ペットとシルバー世代」は、飼い主自身の病気や生活の変化に備え、一時的な預け先や相談できる動物病院を確保するよう呼びかけている。世話を頼める家族や知人、預かりサービスを普段から調べておくこと、健康の記録を残すことも挙げている。[7]

備えを具体化するなら、誰に連絡するかだけでなく、その人が本当に引き受けられるかまで話し合っておきたい。食事、通院先、使っている薬、苦手なこと、緊急時の連絡先を一つにまとめれば、世話を引き継ぐ人にも役立つ。これは同資料を踏まえた、本稿からの実践上の提案である。

終生飼養を、一人で限界まで抱え込むことと同じにしてはいけない。世話が難しくなりそうなら、動物の状態が悪化する前に、家族、動物病院、自治体の相談窓口などへ相談する。預かりや新しい飼い主への引継ぎが必要になる場合も、受け入れ条件とその後の飼養を確認することが大切だ。単に誰かへ渡せば責任を果たせるという話ではない。

マイクロチップは、登録情報まで確かめる

迷子への備えでは、器具を装着することと、飼い主につながる情報を保つことの両方が必要になる。2022年6月に始まった制度では、販売業者が販売する犬猫へのマイクロチップの装着・登録が義務化された。登録済みの犬猫を迎えた飼い主は、所有者情報の変更登録を行う必要がある。[10]

以前から飼っている未装着の犬猫すべてに、一律の装着義務があるわけではない。一方、登録後に住所や電話番号などが変われば、その変更も届け出る。マイクロチップは専用の読み取り機で識別番号を確認し、登録情報と照合する仕組みであり、装着しただけで連絡先が自動的に更新されるものではない。[10]

動物愛護週間を、登録証明書を探し、住所や電話番号を確認する日と決めてもよい。大きな行動ではないが、離ればなれになったときに備える具体的な一歩になる。

同行避難の準備は、地域への配慮でもある

環境省の災害対策資料は、平時の備えとして、ペットを受け入れられる避難所、そこまでの経路、飼養場所、一時的な預け先を確認するよう示している。避難先のルールに従い、飼い主が世話を続けることも必要になる。ペットと一緒に避難することが、避難所の同じ居住空間で一緒に過ごせる保証になるわけではない。[11]

キャリーやケージに慣れる練習、識別情報、食事や健康の記録は、災害だけでなく急な預かりにも役立つ。避難所には動物が苦手な人もいる。鳴き声、排泄物、清潔さに配慮し、飼い主同士が協力できる準備は、動物の受け入れを支える条件でもある。[7][11]

地域の課題として、早く気づく

飼養の困難は、動物だけを見ていても解けないことがある。環境省が2021年にまとめた多頭飼育対策ガイドラインは、飼い主の経済的困窮や社会的孤立などが複雑に関わる場合を示し、動物愛護管理と社会福祉などの連携を求めている。[12]

これは、問題のある状態を容認するという意味ではない。動物の保護と、人への支援、周辺環境の改善を一緒に考えるということだ。近隣の人が異変に気づいた際も、相手を一方的に責めたり、事情を決めつけたりするより、自治体の窓口に状況を具体的に伝えることが支援につながりうる。

動物愛護週間が終わっても、餌や水、散歩、掃除、通院は続く。今週できることは、相談先を一つ確かめ、家族と一つ約束し、動物が過ごす場所を一つ改善することかもしれない。長く一緒に暮らす責任は、その小さな実務の積み重ねに表れる。

出典・資料

行事の予定は環境省・主催者・自治体の日本語発表に基づく。歴史と制度は法令・環境省資料、飼養と防災は公式の啓発資料を参照した。家庭での実践例は、それらを踏まえた本稿の提案として区別している。

  1. 環境省:令和8年度動物愛護週間中央行事及び地方行事の開催について、2026年9月4日
  2. 動物愛護週間中央行事実行委員会:どうぶつ愛護フェスティバル2026、公式プログラム
  3. 環境省:令和8年度動物愛護週間地方行事計画。予定の一覧
  4. e-Gov法令検索:動物の愛護及び管理に関する法律、第4条・第7条。本文は法令APIでも照合
  5. 環境省:動物愛護管理法「法のあゆみ」。1973年制定・1999年改正・終生飼養の明文化
  6. 環境省:みんなに知ってほしい アニマルウェルフェアと5つの自由
  7. 環境省:共に生きる 高齢ペットとシルバー世代、2019年。飼養環境と将来への備え
  8. 動物愛護フェスティバル・札幌、2026年公式案内。防災講座・ケージトレーニング・長寿犬猫表彰
  9. 岐阜県動物愛護センター:イベント情報、2026年9月1日更新
  10. 環境省:犬と猫のマイクロチップ情報登録、第2版。装着・登録・変更手続きの区別
  11. 環境省:人とペットの災害対策ガイドライン〈一般飼い主編〉、平時の備え・避難先の確認・避難中の飼養
  12. 環境省:人、動物、地域に向き合う多頭飼育対策ガイドライン、2021年。背景と多機関連携