長野県白馬村で続けてきた外来種駆除と給水の活動が、3分間の動画を通じて全国の舞台へ進む。環境省が共催する「Green Blue Education Forum 2026」(GBEF2026)のコンクールで、白馬村立白馬中学校の「白馬中学校SDGsサークル」が環境大臣賞に決まった。
テーマは「守り残したい環境、創りたい未来」。国内在住の25歳以下の小学生、中学生、高校生、大学生、大学院生を対象に、授業、課外活動、地域活動などの体験から得た気づき、課題、実践できる方策を3分以内の動画にまとめて募った。
環境省によると、17都道府県から46チームが応募し、8月7日の第一次審査で23チームが通過。8月17日の最終審査を経て、環境大臣賞1件、企業・実行委員会による賞4件、奨励賞3件の計8件が選ばれた。
環境大臣賞は白馬中学校SDGsサークル
環境大臣賞を受けた発表の正式題名は「ワクワクを未来のこどもたちへ~mymizuと外来種駆除が手をつないだ、白馬のSDGsパートナーシップ~」。題名は、給水をめぐる活動と外来種駆除を別々の取組にせず、地域の協働として結び直したことを示している。mymizuは、マイボトル利用者と無料で給水できる店舗・施設をつなぐアプリ兼プラットフォームと運営団体が説明している。
ただし、環境省と主催者の発表には、駆除した外来種の種類や量、給水活動の利用者数、参加者の構成、環境負荷の削減量は載っていない。本稿は「mymizu」を含む題名を正式表記どおり伝えるが、活動の成果を数値で評価する資料は確認できていない。
受賞題名全体を見ると、地域で触れた具体物が起点になっている。兵庫県立三田祥雲館高等学校の科学部生物班は、不要物へ価値を加える「アップサイクルクレヨン」を提案した。同校の公式サイトは、生物班が外来植物の花、コーヒーかす、竹などを材料にクレヨンを作ってきたと紹介している。
栃木県立宇都宮白楊高等学校の食育活動班は、食育から持続可能な地域づくりを考えた。同校の公式記録には、中学校給食のメニュー開発、地場農産物の紹介、野菜摂取を考える催しなどが残る。これらは学校が公表した活動事例であり、受賞発表の全内容と同一だとまでは確認できない。
8件の発表題名が映す地域の課題
主催者の石坂産業が公表した受賞一覧では、企業名を冠した賞を含む8件の題名と所属が示された。以下は公表表記を整理したもので、提案の科学的妥当性や実施効果をJapan.co.jpが独自に認定したものではない。
| 環境大臣賞 | 白馬中学校SDGsサークル(白馬村立白馬中学校・長野県) 「ワクワクを未来のこどもたちへ~mymizuと外来種駆除が手をつないだ、白馬のSDGsパートナーシップ~」 |
|---|---|
| 石坂産業賞 | 三田祥雲館科学部生物班(兵庫県立三田祥雲館高等学校・兵庫県) 「アップサイクルクレヨン~要らないものの価値を手直し~」 |
| 加山興業賞 | 食育活動班(栃木県立宇都宮白楊高等学校・栃木県) 「輝く食と地域のつながり~食育から広がる持続可能な地域づくり~」 |
| 大和リース賞 | ユースたち(愛媛県) 「宇和島エシカルプロジェクトを走り切ったいま」 |
| GBEF実行委員会賞 | 保全生態学研究室(帯広畜産大学・北海道) 「『経験の絶滅』を止めたい!~人と自然が共生する豊かな未来へ~」 |
| 奨励賞 | 井上朝陽(荒川区立第一中学校・東京都) 「荒川区で自生するホタルを増やすには~ホタルもウニも『水』でつながっている~」 |
| 奨励賞 | 昆虫・ラボ(伊東市立対島〈たじま〉中学校・静岡県) 「100年先も残る昆虫標本をつくりたい」 |
| 奨励賞 | 川越市立福原小学校4年2組2班(埼玉県) 「プラスチックゴミにおける環境問題について」 |
提案の範囲は、製品開発、食と地域、倫理的消費、生物多様性、自然体験、都市のホタル、標本保存、廃プラスチックまで広い。環境教育を一つの正解へ収束させるのではなく、地域ごとの観察や実践を共通の審査枠へ持ち込む構成になっている。
一方で、公開された題名だけでは、問題設定の根拠、調査方法、活動量、成果指標、継続計画は比較できない。例えば「アップサイクル」は廃棄物へ新たな価値を加える考え方だが、材料調達や製造に要する資源まで含めた環境負荷が自動的に小さくなるわけではない。「経験の絶滅」も保全教育で使われる概念だが、受賞発表の具体的な調査設計は未公表である。
3分の動画を5つの観点で審査
応募者はエントリーシートと3分以内の動画を提出した。公式サイトは、紙芝居、劇、スライドなど発表方法は自由と説明する。募集は5月12日に始まり、当初の8月3日締め切りが8月6日正午まで延長された。
環境省が示した審査基準は、テーマの斬新性、全体の構成力、提案内容の独創性、巻き込む共感性、伝わる表現力の5項目。これは研究論文の査読や政策評価とは異なる。測定精度や費用対効果だけでなく、短時間で人を動かす物語と表現も評価対象に含むプレゼンコンクールである。
第一次審査は8月7日、最終審査は8月17日に行われた。環境省の発表には、各項目の配点、チーム別得点、審査員ごとの評価、落選した提案への講評は掲載されていない。受賞を順位表以上に読み解くには、9月6日の発表と、主催者が後日掲載するとしている動画を確認する必要がある。
全国の舞台と、全国政策は同じではない
9月6日のGBEF2026では、午前11時10分から受賞者のプレゼンテーションと授賞式を予定する。その後、ディスカッション、ユースと企業によるポスターセッション、ワークショップ、オーディエンス賞、交流会が組まれている。主催は「体験の機会の場」研究機構内の実行委員会、共催は環境省。文部科学省、日本ユネスコ国内委員会、埼玉県が後援する。
「体験の機会の場」研究機構は、都道府県知事などから環境教育の「体験の機会の場」として認定された事業者がつくる任意団体で、21団体が加盟すると環境省は説明する。2022年10月には、環境教育等促進法第20条に基づき、環境省と体験機会の充実・拡大に関する協定を結んだ。
こうした公的な関与は全国へ伝える力を与えるが、8件が国の政策案として採択されたことを意味しない。企業名を冠した賞も含まれるため、選考主体と賞の性格を明示することが重要だ。発表後に見るべきなのは拍手の大きさだけでなく、地域へ戻った活動が続くか、他地域で再現できるか、若者が意思決定へ参加できるかである。
発表後に確認したいこと
- 各提案が示す課題の根拠、活動量、環境効果の測定方法
- 受賞後の資金、伴走支援、学校・自治体・企業の役割
- 参加した若者が地域の意思決定へ関われる仕組み
- 受賞しなかった38件への講評や交流機会
- 翌年度に継続状況を追跡し、公表するかどうか
3分で地球環境を解決することはできない。それでも、地域で見たもの、触れたもの、試したことを言葉にし、別の地域へ渡すことはできる。GBEF2026の価値は、若者の提案を完成品として飾ることではなく、地域へ戻った後も問いと実践が更新される回路をつくれるかにかかっている。
- 環境省「Green Blue Education Forum 2026のプログラム及びコンクール審査結果」(応募数、審査日、受賞者、日程、観覧方法)
- 環境省「GBEF2026の開催及びプレゼンテーション動画の募集案内」(趣旨、応募資格、募集内容、主催・共催関係)
- 石坂産業「GBEF2026コンクール受賞チームの決定」(各賞の正式名称、所属、発表題名。主催実行委員長企業による発表)
- Green Blue Education Forum公式サイト(3分動画の形式、締め切り延長、プログラム、後援・協賛)
- mymizu公式サイト(無料給水アプリ・プラットフォームの機能。運営団体による説明)
- 兵庫県立三田祥雲館高等学校(科学部生物班のアップサイクルクレヨン活動)
- 栃木県立宇都宮白楊高等学校・食品科学科(学校が公表した食育・地域連携活動)
- 伊東市立対島中学校(正式校名と「たじま」の読み)
本稿は2026年8月30日までに公開された環境省、主催実行委員会、受賞者の所属校による一次資料を照合した。受賞者名、学校名、賞名、発表題名は8月27日の公式発表に従った。伊東市立対島中学校は同校公式サイトで「たじま」と読むことを確認した。応募作品の全動画、採点表、活動成果の検証資料は確認できないため、受賞を政策採用または効果認定とは表現していない。主催者、共催者、後援者、協賛企業の役割を区別し、企業発表に基づく情報はその出所を明示した。人物の発言は直接引用していない。