照明はまだ想像の中にある。会場も、進行表も、ポスターに載る出演者名も決まっていない。それでも岐阜では、17歳の高校3年生が観客席の境界線を先に引いた。このステージは18歳以下のためのものにする。

2026年6月に設立されたLiiivv株式会社の創業者兼CEO、神谷健介氏は7月23日、ユースカルチャーフェス「CHAPTER18」を2027年3月10日に岐阜市で開催すると発表した。シアター型・ジャンルレスで、プロのアーティストと18歳以下の出演者が同じ舞台に立つ。招待制ではなく、年齢条件を満たせば誰でも参加できる開かれた形式を目指す。

構想が大胆に見えるのは、運営会社が極めて若いからでもある。Liiivvの設立日は2026年6月8日、資本金は100万円。フェスの協賛目標は2500万~3000万円で、資本金の25~30倍に当たる。最新の詳細表が示す想定規模は1000~1200人。会場は交渉中で、出演者、チケット条件、詳細プログラムは後日発表とされている。

したがって、これは完成したフェスの成功物語ではない。強い自己表現が、契約、予算、未成年者保護、保険、制作工程、集客という厳しい実行段階へ入った物語である。その移行こそ、神谷氏を「すごい高校生」として称賛するだけの紹介より、はるかに重要だ。

17歳Liiivv創業発表時の神谷氏の年齢
6月8日2026年の会社設立日
3月10日2027年のCHAPTER18開催予定日
1000~1200人最新の詳細計画が示す想定規模
2500万~3000万円企業協賛の資金目標
18歳以下発表された参加年齢の境界

「生き方」を表現するフェス

CHAPTER18のコンセプトは「Beyond What You Know. まだ知らない世界へ。」。Liiivvはこれを単なる「学生向けイベント」ではなく、10代の文化、感性、生き方そのものを表現するユースカルチャーブランドと位置づける。音楽を中心にしながら、「ジャンルレス」という言葉で、学校の部活や音楽業界の分類に収まらないアートや表現へ余白を残す。

神谷氏が問題にするのは娯楽の不足だけではない。成績、受験、部活動、SNS上の見え方、大人の期待が、「良い人生」の正解を若者に示し続ける。その中で、未完成の自分を試せる場所が少ないという。CHAPTER18は、10代の出演者をプロの前座として置くのではなく、同じプログラムに並べようとする。

その違いは小さく見えて重要だ。大人は若者向け企画を「成長」を軸に設計しがちである。技能を学ぶ、進路の話を聞く、コンテストで勝つ。神谷氏が作ろうとしているのは、若者自身が作者になる場だ。将来文化を担う準備ではなく、今この瞬間にも自分たちの文化は存在すると宣言する。

CHAPTER18の最も強い発想は、10代が大人のフェスを模倣できることではない。未完成の人生にも、すでに公共の舞台に立つ価値があるということだ。

発表済みのこと、まだ決まっていないこと

発表・確認されている内容7月23日の発表時点で未確定の内容
2027年3月10日、岐阜市、シアター型・ジャンルレス、対象は18歳以下、プロと10代の出演者、招待制ではない。具体的なホール、出演者、料金と販売方法、進行、年齢確認、最低年齢、保護者同伴、アクセシビリティ、交通、安全・保護方針。
最新の詳細表では1000~1200人、協賛目標2500万~3000万円。6月の設立発表は1200~1500人、7月発表の見出しも「最大1500名」。公表資料は定員の数字を一本化する必要がある。
実行委員を募集し、過去の募集要項では制作、ブッキング、広報、運営の役割を説明。最終決定権、有給・ボランティアの区分、専門制作責任者、ガバナンス構造は公表されていない。

開催まで8カ月ある企画として、こうした空欄は異常ではない。しかし結果を左右する空欄である。発表した日付がフェスになるのは、会場契約、資金計画、安全体制がそろった時だ。創業者が17歳だからと切り捨てるのも、夢が鮮やかだから成功を認定するのも公平ではない。必要なのは、実行の節目を見えるようにすることだ。

日本の学校で続いてきた長い予行演習

若者がフェスを運営すること自体は、日本の教育文化から遠くない。文化祭は、学生による制作の最も身近な形の一つだ。クラスと部活動が展示、喫茶、バンド、演劇、ダンス、宣伝、導線をつくる。限られた教室と練習時間を調整し、延長コードの注文を忘れただけで良い企画が止まることを知る。

制度的な源流は「特別活動」の歴史にある。明治後期には修学旅行や運動会、生徒の自治的活動が各校で育った。1947年の学習指導要領試案は、通常教科を発展させる「自由研究」を設けたが、実施が難しく、1948年改訂で教科外活動・特別教育活動へ再編された。その後、ホームルーム、生徒会、学校行事が教育課程に位置づけられた。

現在も文部科学省は、体育祭や文化祭で異学年が協働することを、人間関係形成、社会参画、自己実現を学ぶ場とみなす。生徒主体ではあるが、学校という枠の中にあり、教師が監督し、契約や保険は組織が持ち、参加者は既知の共同体に属する。

CHAPTER18は、文化祭の創造装置を校門の外へ移す。参加者は別々の学校、あるいは学校外から集まる。外部スポンサーが予算を支え、出演者には芸能事務所が関わり、公共ホールには専門的義務がある。守られた教育実践を、現実の文化事業へ変える試みだ。

「18」という数字が変わった10年

CHAPTER18は、日本社会で「18」の意味が書き換えられた10年の先に生まれた。2016年に選挙権年齢が20歳から18歳へ下がり、同年、NHKは1000人の「18歳世代」と著名アーティストが一夜限りの共演をつくる「18祭」を始めた。2022年4月には、民法上の成年年齢も20歳から18歳へ引き下げられた。

したがって「18歳以下」という線は、法的境界をまたぐ。18歳は原則として親の同意なしに契約でき、未成年を理由に取り消せない。一方、17歳の神谷氏は民法上の未成年者である。公表資料は代表就任に伴う同意やガバナンスの仕組みを説明しておらず、成人による法務・専門支援の形を明確にすることが重要だ。政府の法人情報はLiiivvの法人番号と岐阜市の所在地を確認しているが、会社登記が、若者の創造的支配と成人の法的責任の非対称性を消すわけではない。

この境界がブランドを興味深くする。保護者の支援を要する子ども、高校生として自律性を広げる若者、法律上は成人となった18歳が同じ対象に入る。「18歳以下」を単一の客層として扱わず、三つの現実を尊重する設計が必要だ。

ビジネスプランから本物の収支へ

日本は10年以上かけて、若者の起業への入口を広げてきた。日本政策金融公庫は2013年度に「高校生ビジネスプラン・グランプリ」を開始。第1回は151校から1546件、第13回の2025年度には639校から5640件が集まった。かつて珍しかった課外活動が、数百校へ入っている。

政府の2022年「スタートアップ育成5か年計画」は、小中高校生への起業家教育拡大を掲げた。文部科学省は、アントレプレナーシップ教育を会社設立の訓練だけとは定義しない。課題を見つけ、人を巻き込み、社会的・経済的な新しい価値をつくる力を育てる教育だ。東京都の2026年プログラムも、食、起業家、全7回の実践講座を使い、「好き」を事業へつなげる。

ただし多くの若者向け企画は発表で終わる。審査員が評価し、賞を受け、生徒は学校へ戻る。CHAPTER18は、それより厳しい領域へ踏み込んだ。法人、公開日程、資金目標、将来の顧客がいる。学ぶのは自信だけではない。仕入先に支払い、個人情報を守り、安全に開場できるかだ。

この違いは、開業率が近年5%前後にとどまり、政府資料が初等中等段階の起業家教育を国際平均より弱いと評価する日本で重要である。アイデアが不足しているのではない。意志を最初の売上へ運ぶ、反復可能で社会的に認められた経路が少ない。

岐阜は背景ではない

Liiivvは、東京ではなく岐阜から始めることを戦略的選択と呼ぶ。その主張は地域の地理と重なる。岐阜市の人口は2024年に40万人を下回った。15歳未満は4万6175人、11.6%。65歳以上は11万6976人、29.3%だった。岐阜市の最新計画資料は、県内高校生のうち大学へ進学する人の約80%が県外大学を選び、20代は一貫して転出超過、特に名古屋圏への移動が多いとする。

一つのフェスで人口動態は変わらない。大学の定員、恒久的な雇用、住宅を生むわけでもない。それでも若者の頭の中の地図は変えられる。地元で本格的なアーティスト、スポンサー、制作仕事を集められれば、岐阜は「出ていく場所」だけでなく、「何かを始める場所」になる。

CHAPTER18の地域的意義はそこにある。全員を残す必要はない。進学で離れても使える人脈をつくり、帰郷や遠隔協働を想像可能にする。仲間、観客、挑戦する許可が見つかるかどうかは、人が場所を選ぶ理由の一部であり、文化基盤は経済基盤でもある。

3000万円が問う信用

2500万~3000万円という協賛目標は、資本金100万円の会社にとって大きい。資本金とイベント予算は別であり、協賛金は出資でなくても制作を支えられる。それでも、この倍率はLiiivvが外部から獲得しなければならない信用の大きさを示す。

1000人規模のホールイベントでは、会場と機材、出演料と交通費、音響、照明、映像、舞台人員、リハーサル、警備、救護、保険、チケット、権利処理、案内、移動支援、バリアフリー、宣伝、予備費が積み上がる。参加者の多くが未成年なら、安全と保護を「演出を守るために削る項目」にしてはならない。

会社の設立発表は、2029年に売上5億円、2035年に250億円、2040年に1000億円という極めて大きな長期目標も掲げた。これはLiiivvの目標であり、Japan.co.jpが検証した予測ではない。大志は仲間を呼ぶが、精度が信用を生む。当面は、確定会場、制作パートナー、協賛確約額、現実的予算の開示が、遠い将来の売上目標より重要になる。

スポンサーシップの矛盾

CHAPTER18は若者が所有する真正な空間を約束する一方、企業にはZ世代・α世代との接点を提供する。この二つは両立できる。協賛金でチケットを安くし、若い制作者へ報酬を払い、機材や専門知識を提供できる。しかし衝突もする。評価から解放するための空間が、大人が若者を分析し、分類し、販促する別の場所になり得る。

解決策は協賛を拒むことではなく、統治することだ。若い運営者が、イベントに合う協賛業種を決める。広告は広告と明示する。来場者データは最小限にし、同意を得て、10代にも分かる言葉で説明する。撮影、著作権、出演者の画像利用には明確な規則が要る。スポンサーが個人連絡先や、メンタリングを装った創作支配を買えるようにしてはならない。

真正性はデザインの雰囲気ではない。誰がプログラムを決めるか、観客データを所有するか、報酬を受け取るか、拒否権を持つか、功績を認められるかという権力配分である。

若者主導は、大人不在ではない

観客に年齢制限を設けても、大人がイベントから消えるわけではない。プロアーティスト、会場職員、技術者、警備、保険、法律家、保護者、スポンサーは舞台裏や制度上で関わる。区別すべきは、大人の責任と大人の支配である。

大人は、法と安全と経験が求める義務を引き受ける。契約、会計統制、緊急計画、安全な帰宅、ハラスメント通報、未成年者保護。しかしそれを理由に、若者を飾りの助言者へ落としてはならない。プログラム、デザイン、言葉、空気は10代が実際に決める必要がある。

若者が決める領域大人が確実に支える領域
テーマ、出演者発掘、視覚表現、SNSの声、演目構成、同世代の体験、「18歳以下」の意味。契約、予算、保険、会場法令、救護・緊急計画、保護方針、アクセシビリティ、データ保護、専門技術基準。
どの協賛者が適切か、企業露出をどこまで認めるか。デューデリジェンス、書面契約、支払管理、秘密を守れる苦情窓口。
参加者にとっての成功。入場者数やSNS表示数だけにしない。独立した安全確認、事故報告、開催後の透明な会計。

本当に開かれた入口をつくる

会社は、年齢条件内なら誰でも参加できる非招待制を掲げる。その約束を実体化するには、まだ公表されていない設計が要る。最低年齢はあるのか。年少者に保護者同伴を求めるなら、年齢制限のある客席へ保護者はどう入るのか。何で年齢を確認し、一般的な身分証を持たない人をどう扱うのか。

料金も境界になる。若者限定でも、チケット、電車代、障害対応、ライブ文化を知っていることの前提で排除は起きる。山間部・郊外の高校生には終電に合う交通が必要かもしれない。働いている若者、家族を介護する人、通信制・定時制、学校に通っていない人も設計の中に見えるべきだ。

大人を入れない規則は一行で書ける。異なる若者を中へ入れる仕組みの方が、深い仕事である。

社会を変えたいが、自分の力を疑う世代

日本財団が2026年に6カ国の17~19歳へ行った調査では、日本の68%が国や社会の役に立ちたいと答えた。一方、自分の行動で国や社会を変えられると思う人は52.7%で6カ国中最低。日本の将来が良くなると考える人は15.6%にとどまった。

調査は一人の高校生を説明せず、一つのフェスへの需要を保証もしない。それでもCHAPTER18が渡ろうとする距離を照らす。「役立ちたい」から「自分の行動には効力がある」へ。舞台は速い証拠を返す。ポスターが応募を生み、リハーサルが関係をつくり、支払われた請求書が若者の発想も成人経済へ入れると示す。

ただし自己効力感を新たな成績表にしてはならない。来場者全員が創業者やリーダーになる必要はない。音楽を知り、友人をつくり、知らなかった生き方を見るだけでも失敗ではない。主体性は、すべての「好き」を事業に変えずに探索できる権利から始まる。

3月10日を何で評価するか

簡単に測れるのは入場者数、協賛価値、SNS到達数だ。しかし本質的な問いは別にある。若者が実際の決定権を何件持ったか。10代の出演者に報酬または透明な条件があったか。地域・所得の幅は広かったか。障害のある人が参加できたか。防げる事故なく終えたか。取引先と制作者に期限通り支払ったか。参加者は第2章を望んだか。

公開すべき実行の節目
  • 会場契約と確認済み定員
  • 制作・安全保護の責任者
  • 料金、アクセス、年齢確認規則
  • 出演者と10代パフォーマーの条件
  • 協賛確約と若者データ利用の制限
  • 交通、障害対応、保護者同伴の仕組み
  • 開催後の会計・成果報告

Liiivvが確定した内容を順次公開すれば、フェスを宣伝する以上の価値を持つ。他の若い創業者へ、責任ある実行の形を示せる。透明性は驚きを壊さない。子どもと若い成人で満ちる会場に、驚きが安全に生まれる条件である。

若者主導の試験は、大人が消えることではない。大人の能力が、若者の決定権を可能にすることだ。

最初のチャプター

17歳が企業、アーティスト、都市に対し、「10代の内面を中心に集まってほしい」と呼びかける。その大胆さは魅力的だ。日本社会は若者に「将来何になるのか」と尋ね続ける。CHAPTER18は「すでに何を作っているのか」と問い返す。

しかし3月の日付を象徴だけで守ることはできない。ホールと契約し、協賛を確約し、出演者と合意し、1000人の移動を組み、最後の一人を安全に帰す。最初のチャプターはプレスリリースではない。その後に続く、平凡で具体的な約束を守る長い列である。

神谷氏とチームがそれを成し遂げれば、岐阜が得るのは一日のフェスだけではない。若者の文化は、東京や成年や許可を待たずに公共のものになれるという証拠だ。今は想像の中にある照明が点灯する時、その部屋を考えたのは10代であり、彼らが満たす権利を支える信頼できる構造も同時に完成していなければならない。

情報源・参考資料

現在のイベント・会社情報はLiiivvの発表に基づき、事業者の主張として区別した。法人の存在、教育史、法律、人口、若者の全国動向は政府・公的機関資料で確認した。