農産物をつくる過程で大量に出るもみ殻を、地域の資源として使い切れるか。福島県が今回認定したのは、福島県内と東北地方のもみ殻をプラスチック樹脂に混ぜて成形するトレーや皿などだ。捨てられてきた副産物に新しい用途を与え、学校や行政施設での利用につなげる構想である。
県は2026年7月29日、南相馬市のトレ食株式会社と同社の「もみ殻バイオマストレー・テーブルウェア」を「福島県新事業分野開拓者認定制度」の対象に認定した。県の公開ページは8月28日に更新され、2026年度の認定事業者として同社1社を掲載した。
認定番号はR0801-001。有効期間は2026年7月29日から2028年7月28日までの2年間だ。制度は、県が認定製品を購入する場合、通常の競争入札によらず随意契約を使えるようにする。新しい製品の販売実績が乏しく、公共市場へ入りにくい中小企業の販路を支える仕組みだ。
随意契約への道を開く
自治体が物品を買う場合、価格や条件を比べる入札が原則になる。だが、市場に出たばかりの製品は実績が少なく、既存品と同じ物差しだけでは選ばれにくい。福島県の制度は、新規性があり、県の機関で使う可能性がある製品やサービスを先に審査し、購入の必要が生じたときに随意契約という選択肢を用意する。
それでも、認定企業を自動的に優先する制度ではない。県の担当機関は、用途、仕様、価格、納期、予算などを検討したうえで契約の要否を判断する。今回の公表資料にも、具体的な注文や実証導入は記載されていない。
もみ殻と樹脂を組み合わせる
県が公開した認定証は、製品を「福島県産を含む東北地方のもみ殻をプラスチック樹脂に混ぜ合わせたバイオマスコンパウンドを成形」した環境配慮型のトレー、食器、整理箱などと説明する。認定証によれば、食器洗浄機に対応し、食品衛生法に適合している。
ここで言う「バイオマス」は、原料の一部に生物由来のもみ殻を使うという意味だ。公開資料は、製品がプラスチックを使わないとも、自然環境で分解するとも説明していない。もみ殻と樹脂の配合率、樹脂の種類、製品ごとの重量や耐用回数も記載されていないため、その性質を「脱プラスチック」や「生分解」と言い換えることはできない。
認定証は、既存の金型を持つ協力メーカーを活用すれば、従来品から切り替える際に新たな金型投資を不要にできるとしている。ただし、特注寸法には別途費用が生じる場合がある。価格は品目や仕様によって異なり、問い合わせが必要とされている。
学校、病院、県の施設を想定
想定される納入先には、学校給食センターや県立学校、県庁と地方振興局の食堂・会議室、県立の福祉施設・病院、復興関連イベントや県主催イベントが挙げられている。皿やトレーが繰り返し使われる現場なら、耐久性、洗浄性、破損率を比較する使用データも集めやすい。
一方で、公共調達が環境負荷の低減につながるかは、もみ殻を含むことだけでは決まらない。原料の乾燥・粉砕・輸送、樹脂との配合、成形時のエネルギー、使用期間、洗浄、廃棄や再資源化まで含めた評価が必要だ。県の認定資料には、従来品とのライフサイクル比較や二酸化炭素排出量の算定は示されていない。
| 認定事業者 | トレ食株式会社(福島県南相馬市) |
|---|---|
| 代表者 | 代表取締役 沖村智 |
| 認定製品 | もみ殻バイオマストレー・テーブルウェア |
| 認定番号 | R0801-001 |
| 認定期間 | 2026年7月29日~2028年7月28日 |
| 公表された構成 | 福島県産を含む東北地方のもみ殻を、プラスチック樹脂に混ぜたバイオマスコンパウンド |
| 公表された性能 | 食器洗浄機対応、食品衛生法適合 |
| 調達上の効果 | 県が購入を決めた場合、随意契約が可能。購入保証ではない |
南相馬で育てる資源循環
トレ食は2018年6月に設立され、南相馬市原町区に本社を置く。同社は、もみ殻など植物由来の残さからセルロース系素材を取り出し、樹脂材料として利用する事業を進めている。今回の認定は、研究開発された材料を行政需要へ結びつける販路面の措置と位置づけられる。
県の認定証は、国内で年間約150万トンのもみ殻が発生し、多くが廃棄または焼却されてきたと説明する。この数量と処理状況は認定証に記載された制度資料上の説明であり、本稿では独自に再推計していない。製品の原料調達量や年間生産能力も公表されていない。
地域循環を実体化するには、どの地域からどれだけのもみ殻を集め、どの工場で加工し、使用後にどう扱うかが鍵になる。公共施設での採用は、安定した需要を生むだけでなく、耐久性や洗浄性を検証する場にもなり得る。だが、その検証は実際の契約が結ばれてから始まる。
調達時に確認したい情報
- 製品ごとのもみ殻配合率と樹脂の種類
- 価格、納入数量、使用施設、契約期間
- 食器洗浄機での耐用回数、変形や破損の試験方法
- 従来品と比較したライフサイクル排出量
- 使用後の回収、再資源化、廃棄方法
農業の副産物を地域の食卓へ戻す発想はわかりやすい。制度の成果を判断する物差しは、認定件数ではなく、実際の購入、繰り返し使用したときの品質、費用、そして従来品より環境負荷を減らせたかどうかである。今回の認定は、その評価へ進むための入口を開いた。
- 福島県「令和8年度福島県新事業分野開拓者認定制度認定事業者」(認定事業者、製品名、有効期間)
- 福島県「新事業分野開拓者認定制度 認定商品詳細」(認定番号、製品構成、特徴、想定用途、日本語PDF)
- 福島県「福島県新事業分野開拓者認定制度について」(制度要件、随意契約、購入非保証)
- トレ食株式会社「会社概要」(本社所在地、設立時期、事業概要)
本稿は2026年8月30日までに公開された福島県と事業者の日本語一次資料を照合した。製品構成と性能は県の認定証に基づく。もみ殻配合率、樹脂の種類、価格、発注実績、ライフサイクル評価は確認できていないため、推測で補っていない。引用文は使用していない。